婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
「ここからは歩きになる、荷物を減らすために食事は済ませていこう」
「ヤックルはどうするの? ここのは山道は登れないのよね、置いていくつもり?」
山の麓までヤックルに乗ってきたが、これ以上の坂道はヤックルの身体に負担をかけることになるので歩くしかない。ロッテの問いかけにレーヴェは麓の大きな木に隠れるように立っていた山小屋を指さした。
「あそこに魔女と呼ばれる老婆が住んでいる。先に連絡して、彼女にヤックルの面倒を見てもらうよう頼んでいるから大丈夫だ」
「魔女……?」
ゼーフェリング王国には魔法士はいないとされているが、実際は隠れて暮らしているのはロッテも知っている。他国の魔法士の血をひくものは、簡単な術くらいならば大抵使えるらしい。
基本的に魔法の使用を禁止されているこの国では、そうそう使える機会はないのだけれども。
「ああ、魔女と言っても薬品などを扱う女性だ。魔法士の血は流れていないらしい、本当かどうかは知らないが」
「そうなのね、じゃあヤックルも安心だわ」
山小屋のドアを叩くと年老いた女性が出てきて、レーヴェの顔を見た途端何とも言えない表情をした。
「お前はまだこんなとこにいたのかい? いつまでたっても鈍間だね、間に合わなくなってもアタシは助けちゃやんないよ」
「分かってるよ、相変わらず口煩い婆さんだな。それよりもこの子を紹介したいんだ、彼女はシャルロッテ。ファーレンハイト侯爵家の令嬢だ」
そう言って紹介されたロッテが老婆に挨拶をしようとすると、彼女の表情が驚きのそれへとみるみる変わっていく。そして……
「この娘は、聖女じゃないか!」