婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
して……」

 野太い男の声だ、レーヴェのそれとは明らかに異なる。すぐに身の危険に気付いて、ロッテは音を立てないよう後ろに下がろうしたのだが。
 無理をした所為か、思うように足が動いてくれず引き摺ってしまうような形になってしまった。小枝や葉がガサガサと音を立て、ロッテの居場所を見えない誰かに知らせてしまう。
 ザザッ、ザザッと複数の足音が近づき、三人の男たちがロッテの前に姿を現した。

「本当にこんなところに若い女がいるとはな、アンタがシャルロッテか?」
「……あなた達は何者なの? 私を始末しろと、アンネマリーに頼まれたの?」

 男たちが手に持っているのは大きなナイフで、ロッテくらいなら簡単に刺し殺すことが出来そうだ。思い通りに力を使えないロッテに彼らと戦うすべはなく、レーヴェが戻ってくるまで時間を稼ぐしかない。
 せめて何か情報でも引き出せないかと、男たちと向き合うロッテも必死だった。

「アンネマリー? 知らないな、俺たちを雇ったのは黒の魔導士ローブを着た男だったが」
「魔導士ローブを着た男の人? それは、どんな……」

 てっきりアンネマリー自身が隠れて刺客に依頼していると思っていたが、どうやら違ったらしい。魔導士ローブを着ている人間はこのゼーフェリング王国では珍しい。それが王都だとすれば尚更だ。
 何か大事な手掛かりになるかもしれない、そう考えたロッテは自分から男たちへと近寄ると……


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