婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
しかし香炉から漏れてくる香りにロッテはあの日の事を思い出した。そう、アンネマリーが初めて聖女の力を顕現した時に広がっていた甘い香り。
……だが、いったいなぜ? 香炉を渡したという魔導士ローブの男が、それとどう関係があるのかも分からない。混乱するロッテを前に、男たちは「可哀想になあ」「おい、慰めてやれよ」などと言って笑っている。
しかしすぐにリーダー格の男が手に持ったナイフをロッテの首元に突きつけてきた。
「すまないな、お嬢ちゃん。今回のは破格の依頼だったんだね、俺たちを恨まないでくれよ?」
冷たい金属の触れる感触、それがゆっくりと離れていくのを目で追った後。力を込めて振り下ろされてくるであろうナイフの恐怖に、ロッテは堪らず目をギュッと閉じてその衝撃と痛みに備えた。
次の瞬間――‼
「――ロッテ! 無事か?」
「レーヴェ!」
大剣を出す余裕もなかったのか、レーヴェは懐に忍ばせていた短剣で男の刃を受け止めていた。しかし大きめのナイフを短剣で受け止めるには限界があるのか、レーヴェの身体はジリジリと後ろへと押しやられていく。このままでは庇ったはずのロッテにまで怪我をさせてしまうかもしれない、焦るレーヴェに残りの男たちがナイフを持って襲い掛かってきた。
「レーヴェ、危ない‼」
ロッテが必死に叫んで、彼を自分の身体で守ろうとしたその時……!