婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
見放された、侯爵令嬢
ゼーフェリングはこの大陸では特別大きな国である。ファーレント家から生まれる聖女の力の加護を受け、国は栄えその立場を築いていったのだから。
アンネマリーが聖女としての力を顕現させるまでは、ずっと対等の立場だったはずなのに今はもう……
ゼーフェリングの王都からナーガランド辺境地までの道のりは遠い。途中の町で三度ほど安い宿に泊まったが、その後は寒い馬車の中で夜を明かすことになった。
渡されたお金が尽きたのか、それとももう小さな村もないのか。それを聞く気持ちの余裕の今の私には残っていなかったのだけど。
「……シャルロッテ様、着きましたよ」
馬車のドアが開かれて、中年の御者が顔を出した。早く出てくれと言わんばかりの表情に、私は黙って馬車から降りるしかない。
「ここがシャルロッテ様が療養するお屋敷でございます、使用人もいると聞いてますのでどうぞ身体と心をお安め下さい。それでは……」
そそくさとその場を立ち去ろうとする業者の気持ちも分かる、目の前にあるお屋敷とやらはどう見てもボロボロの廃墟にしか見えない。ここに使用人がいるというのも怪しい。
しかし御者が行ってしまったいまは、もう私に帰る方法などなく。その場にずっと立ち尽くしているわけにもいかず、御者が降ろしてくれたケース二つを持ってその屋敷の玄関へと歩いていく。