婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子に溺愛される運命だったようです!
「ちょっと待って! 無駄に人を殺しては駄目、その人たちはもう戦う意思はないと思うから」
「……アンタがそう言うなら、仕方ない。俺にとって命の恩人だからな、聖女様は」
そう言うと男は持っていた剣を鞘に納める、それだけで場の緊張が随分とけた気がした。ロッテを狙ってきた男たちは気絶したリーダー格の男性を抱えて一目散に逃げていく。
どうやら、危険な状態は何とか切り抜けたらしい。ここ暗殺者の男が残ってることを除けば、の話だが。
「どうしてお前が俺たちを助けた? 何を企んでるのか話せ」
「助けてもらっておいて、その態度とこれはないんじゃないか? まずは礼を言うべきだろう」
先ほどまで持っていた短剣を男の頸動脈に添えて、レーヴェは低い声でそう問いかける。だが一度命の危機を味わったためか、男はそんな状況にも動じはしない。
屋敷に刺客としてやってきた時は頭からつま先まで黒ずくめの忍装束だったはずなのに、男の今の服装は動きやすそうな戦闘服と胸当てになっている。
「俺の服を勝手に着ておいて、よくそんな口を叩けるな。何のつもりで俺たちの後をつけてきた? また聖女アンネマリーから指示をされたのか」
「いいや、ただの恩返しだ。そこの聖女様には命を助けてもらい、アンタには屋敷で傷が治るよう休ませてもらった。刺客の俺にそこまでするようなお人好しは、さすがに放っておけないだろう?」
「お前の方が俺より弱いのに、心配されなきゃならない理由が分からない……」
レーヴェは男の言葉に呆れたような声を出す。出会った時は気付かなかったが、この暗殺者は随分気楽な性格をしているのかもしれない。