隠された彼の素顔

 彼について幼馴染の智子に話せば、やっぱりダメ出しをされる。

「どこがいいの! 絡んでくる男を撃退したのはいいとしても、全然頼りにならないじゃない!」

 半強制的にマッチングアプリに登録され、希望の年収、趣味、などを智子が入力した。

 趣味はアウトドアが好きな人を希望の項目に、チェックを入れられた。私の好みとは真逆のタイプ。

「嘘を入れるのは、どうかな」

 おずおずとお伺いを立てても、智子はお構いなし。

涼音(すずね)、山に行ったりするの好きじゃない」

「好きだけど、ゆっくり山道を散策したり、緑をボーッと眺めるのが好きなだけで」

 一般的なアウトドア好きはキャンプをしたり、川下りとか、マリンスポーツが好きなアクティブな人なんじゃ。

「いいからいいから。たまには正反対な人と接してみたら、なにか発見があるかもよ?」

 気乗りしないまま、マッチングした男性と会い、どんどん話が進んで行った。

 二、三度お茶に行っただけなのに、結婚する話になり、モデルルームを見に行こうと誘われた。

 たしかに今まで出会った人とは違う。積極的で行動的。頼りになりそう。

 でもやっぱり心の中にはあの猫背の彼がいるこんな気持ちのまま、結婚を進めていいのかなという戸惑いがあった。

 ハッキリしない心持ちのまま、待ち合わせた住宅展示場。男性は、結婚詐欺師だと知る。

 天罰が下ったのだと思った。神様って本当にいるんだなって。

 もしかしたら、身包み剥がされ捨てられていたかもしれない。一文なしになっていたかもしれない。
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