隠された彼の素顔
呆然としてよろよろと歩いた先で、ショーが開催されていた。男の子たちが好きな戦隊ショー。
親子連れが座る場所から、離れたベンチに腰掛ける。
ぼんやり見ていると、悪者が出てきて、大変な場面にヒーローが現れるお決まりのショー。
大人には、わかり切った内容。それなのに、最後まで見続けた。
いいなあ。こんな風に、私にもヒーローが現れたらいいのに。そんな人には一生出会えないかもしれない。
悲劇のヒロイン気取りね。と笑えてしまうのに、涙がこぼれた。
不意に自分の側に人が歩み寄る気配を感じ、顔を上げる。傘を差し出され、初めて雨に濡れていたと気づく。
立っていたのは、出演していたレッドだった。
声をかけてくれた優しさと、彼の思わぬ言葉に止まった涙がまた流れた。
「強がらなくていい。だからって傷つかないわけじゃない」
そっか。私、傷ついていたんだ。相手の方に好意を寄せていたわけじゃないけれど、結婚しようと言われてうれしかった。
でも実際は騙されただけで、自分はその程度なんだと言われた気がした。
「傘、あげるよ。きみを助けられなかったお詫び」
そう言って傘を渡すレッドに、胸が熱くなる。
彼が去っていったあと、傘を持ち、温かな気持ちになって家に帰れた。