隠された彼の素顔

 それから戦隊ショーが近くであるときは、休みを合わせて見に行った。さすがに子ども連れの親子の中で前列で見るのは憚られ、後ろの隅の方で観覧する。

 毎度決まったパターンだ。それでも見に入ってしまう。アクションシーンはカッコよくて、本当にこんなヒーローがいたらいいのにと夢見心地に眺める。

 ピンチに助けてくれて、と考えたところで、ふとレッドと猫背の彼が重なる。あの、しつこいお客を追い払ったときの彼。

 舞台上で悪役と睨み合うシーン。あの日の人を寄せ付けないオーラの彼と、レッドとがダブって見えた。

「なに考えてるのよ」

 頭を振って妄想を追い出す。たしかにあの日の彼は私のヒーローだった。だからって、レッドと彼を重ねるのは、夢を見過ぎている。

 妄想だ。そう思うのに、レッドを目で追いながら、日々観察していた猫背の彼を思い出す。どうしても重ねてしまい、「これは重症ね」と笑った。
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