隠された彼の素顔
落ち着くまでと言われ、自宅待機になる。元々、顔を出したくないという俺の希望を聞き入れてもらっていた事務所の判断だった。
ギリギリの人数でやっている戦隊ショー。しかし穴を開けるわけにはいかないため、急遽別のアクション俳優に代打を頼み、俺は裏口から帰された。
とても出演できる心境ではなかった。
マンションに帰ると、カーテンも開けれない状態で幾日も過ごした。
しばらくしても、戦隊ショーが行われる会場には、レッドの正体を探ろうとする人々が押し寄せた。その数は、減るどころか増える一方だった。加熱する報道に怯える。
心配してたまに連絡をくれる緑川さんが、信じられないメッセージを送ってきた。
《前にお前の応援に来てた女性が、心配でレッドの見舞いに行きたいって》
彼女は俺が迫ってから、ショーには来なくなっていた。今さらなんだというのだ。
《素顔が知られて、困ってるんじゃないかって》
彼女にはもう何日、いや何週間も会っていない。顔さえも見ていない。
けれど、この状況下で会いたいという彼女は……。
《わかりました。送る住所に来てほしいと伝えてくれませんか》
俺は全てにケリをつけるつもりで、覚悟を決めた。