隠された彼の素顔
数時間後、インターホンが鳴り、俺は画面に向かう。小さな液晶に緊張した面持ちの彼女が映っている。
「あの、花井です。花井涼音です」
「オートロック解除したから、入って」
彼女の下の名前をこんなタイミングで知るなんて、心底神様なんていないと思った。
もう一度インターホンが鳴り、玄関のドアを開ける。目を見開く彼女に「入って」と促した。
驚くのも無理はない。俺はレッドの姿になって彼女を出迎えたのだから。それでも彼女はめげずに話しかけてきた。
「あの、これ。外にも出られないんじゃないかと思って」
袋を差し出され、中身は食料品らしい。形ばかり受け取る。
「ありがとう。心配しなくても、今はネットでなんでも配達してもらえるから」
「あ、そうですよね。ごめんなさい」
棘のある言い方。これでも苛立ちを抑えていた。
「それで? あの日から姿を見せなくなったのに、どうしたの?」
核心をつく質問に、彼女はたじろいでいる。
「それは、その」