隠された彼の素顔

 戦隊ショーが開催される住宅展示場は人でごった返していた。ネットニュースを見た人たちだろう。普段ならいないような若い女性から、記者の人たちまで。

 とても出演者に声をかけられる状況ではなさそうだ。それでもショーを最後まで見て、なにもできないまま帰宅した。

 それから、何度ショーを見に行っても無駄だった。噂が噂を呼び、観覧者は日に日に増えていく。

 ショーを見に来ても、どうにもならない。けれど、ここに来る以外にいい案が思いつかない。

 どうすればいいのかわからなくて、ショーが終わってもその日はしばらくその場を動けなかった。

「前に、控え室に来てくれた人だよね?」

 声にハッとして顔を上げる。

「緑川さん!」

 人差し指を口元に当てて、「シー」としてから彼は言う。

「連絡先、教えてくれないかな」
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