隠された彼の素顔
「背が高く成長できたのと、運動神経が悪くなかったのは、親に感謝してる。スタントマンなら動きだけでいい。子どもの頃、好きだった悪者を倒すヒーローに憧れもあったし」
「だから、戦隊ヒーローに?」
「うん。まあ、もちろんそれもある。一番はこれだよ」
俺は自分自身を指差した。
「このボディースーツとマスクは、俺の要塞だ。城とかを守っているあれ」
頭の中で要塞を思い描いたのだろう。彼女は目を丸くする。
「要塞って、攻め入るのが難しいあれですよね」
「そう。俺にとっては、たとえこのペラペラの布一枚だとしても、これだけで自分の身を守れる。なんていうか、自分の見た目を隠せているお陰で、役になり切れるんだ」
「それで、そっか」
彼女はなにか納得したようにつぶやく。
「逆にこの姿じゃないと、こんな風には話せない」
今の姿である必要性を説明してから、俺は頭を下げた。
「今まできみにしでかした失態を、許してくれとは言わない。でも謝りたい。俺はきみを勘違いして」
彼女は静かに首を横に振る。それでも俺は言葉を重ねる。レッドの勇気がなくならないうちに。