隠された彼の素顔
彼の本当の素顔
ゆっくりと歩み寄ってきた彼は、私の隣の椅子を引き、腰掛けた。
マスクが鼻先までめくれた、どこか妖艶な姿の彼を見上げる。座っているか立っているかの違いはあるけれど、この光景は三度目だ。
そして彼は改めてマスクに手をかけて全てめくり上げた。頭を振り、髪をかき上げてから、真っ直ぐに私を見つめる。
しばらく見つめ合ってから、その目は伏せられ、私の肩に手が置かれた。
傾けられた顔がゆっくりと近づき、躊躇して、それから優しく唇は重なった。
柔らかい優しい触れ方に、胸がキュンと甘酸っぱい音を立てる。
「初めて、目が合いました」
「うん」
言葉少なに彼は告げる。
「好き、だから」
掠れた声は胸を締め付ける。
「キスしたかった」
「はい」
ほしかった答えを聞けて、鼻の奥がツンと痛くなる。堪えきれない涙が頬を伝って落ちていく。