隠された彼の素顔
「私も、まだ博己さんの顔を直視するのは緊張します。あっ、名前! キャッ」
後頭部に手を回され、そのまま引き寄せられた。彼の胸の中に収められ、抱き締められる。
「嫌いだったのに、きみに呼ばれるのは、心地いいみたいだ」
抱き合う彼の背中が少しだけ丸くなり、温かい気持ちになる。
「私は、涼音です」
「涼ちゃん? かわいいね」
甘い囁きに耳まで熱くなる。彼が自分の武器を使いこなせるようになったら、どうなっちゃうんだろう。
私の不安をよそに、彼は消えそうな声を出す。
「もう少しこのままでいて。顔、見られたら喋れなくなりそう」
半べそみたいな声が愛おしくて、私はわざと彼を覗き込んで唇を奪う。
目をまん丸くした彼と目が合って、どちらともなく顔を近づけると、もう一度唇を重ねた。
「私、猫背の気弱な姿も、アクションをしているかっこいい姿も、全部全部好きです」
目を見開いた彼は、再び私を抱き寄せた。そしてきつく抱き締めて言う。
「俺、涼ちゃんに似合う男になるから、待っていて」
私は彼の胸の中で首を振る。
「今のままで大好きです」
fin.