卒業したらきっと。
痛さに顔をしかめながら走る。


卒業しちゃうから、最後だから──


両思いになれるなんて、そんなの無理だって分かってる。


だけど、涙を流すのは今日で終わりにしたいから。


そしてようやく着いた華咲女子高校。


私の目の前には制服を着て涙ぐんでいる女子、笑顔の女子、たくさんの人がいた。


────雪くんっ



見渡す限り、この場には居なかった。


私がキョロキョロとしているせいか、違う制服のせいか、一人の女子高校生が話しかけてきた。


「あの、誰か探してるんですか……?」


そう聞いてきた子はおさげ姿の可愛い子。


「あ、えっと、か、顔立ちの良い男の子とか……知らない、ですか……?」


初対面の人と話すせいか、少しぎこちない。


「お、男の子なら、さっき走って芽衣と一緒に高校を出ました、よ……?」


「ご親切に、あ、ありがとうございます……」


丁寧にお辞儀をした後、また走り出した。

お願いっ、間に合って………


そんな願いを胸に、また走り出した。


疲れからなのか、恋心からなのか、目頭が熱くなる。

ダメ、まだ泣かない………っ


泣くのは雪くんに気持ちを伝えてからだって決めた癖に………。

溢れそうになる涙を拭った。


────そんな時、見覚えがある後ろ姿を見つけた。


隣にはロングの女の子。


チラッと見えた雪くんの顔は真っ赤。


並んで歩いている二人から目が離せない。


「はぁ、はぁっ」

時が止まったかのように自分の吐息だけが聞こえた。



間に合わなかった…………?


手、遅れ……、……?


距離が近くって、いかにも“お似合い”な二人。


み、見ちゃダメ………目を、閉じて……っ


頭に何回もそう言い聞かせているのに頑なに釘付けになっている。

ダメ、だったの……?


違う……きっとまだ告白をしてないんだ………


そんなの一目見たら分かるよ───


だって初めてみた表情なんだもん……っ


顔を真っ赤に染めている雪くん……。



────そうだよ。


何度も何度も考えたはずなのに──っ


雪くんだって、“恋”、してるんだもんね。



きっと、私みたいにずっと悩んだり、考えたり妄想したり………、


私、バカだ………っ


『間に合って………』だなんて………。


クルッと体を後ろに向けて歩き出した。


自分に言い聞かせる。

『雪くんの恋を邪魔しちゃダメ。』


涙を隠すように下を向いて歩いた。


お幸せに────だなんて考えて。

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