メルティ・ナイト
意を決して敷地内に足を踏み入れた。
と同時に予鈴が鳴り、驚きで小さく声を上げる。
まるでわたしを待っていたかのようなタイミング。
もちろんただの偶然だろうけれど、緊張気味だったおかげで心臓がバクバクしている。
いまは昼の12時15分。
これから昼休みといった時間帯だろうか。
ふつう転入生は朝から呼ばれるものだと思っていたから、時間を聞いて拍子抜けだったのを覚えている。
転入手続きが終わってからのこと。
電話で校長先生とお話させてもらったときに、初日の登校時間はお昼あたりで大丈夫だと言われて。
『でも、せっかくなので朝から行ってもいいですか……?』
朝からのほうが学校の雰囲気を掴めていいかな、と思って提案したんだけれど。
『ううん、ちがうの。うちの高校は昼からのほうが雰囲気が掴めるわよ?』
お茶目な話し方をする優しい校長先生の言葉が、そのときは理解できなかった。