メルティ・ナイト
ひ、瞳フェチ……。
なんとも聞きなれない言葉だけれど、いまは置いておこう。
変わらず、飽きずにわたしをまっすぐに見つめる茉央さんと目が合う。
どこか惹かれるそのオーラに、飲まれたいと思ってしまう。
出会ってすぐなのに、気になって仕方がない存在になったのは明らかだった。
「は、はい……っ、茉央さん、よろしくお願いします」
ぺこり、と黒髪の彼にお辞儀をすると、くすっと笑われる。
反射的に顔をあげると、彼は髪をかきあげてわたしに言う。
「さん付け、敬語、どっちもいらないから」
同い年だし、と付け加える彼に、慌ててわたしも口を開く。
「でも、じゃあ、なんて呼べば……」
「茉央でいいよ」
「いやっ、無理です……っ!いきなり呼び捨てなんて!」
「ふっ、純情なのな」
眉を下げて笑った彼に、目が釘付けになる。
ドキッと胸が高鳴ったのは言うまでもない。
最初に出会った恩人の赤坂さんには抱かなかった感情が、目の前の彼には抱いてしまっているのが身にしみて感じた。