身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 十二時半を過ぎた頃、昼食のお膳を下げに病室を回る。

 下げたトレーを配膳車に載せて片付けていると、向こうから「お疲れ」と声がかけられた。


「お疲れ様ー」


 トレーを押し込みながら返事をした相手は、看護師の笹原(ささはら)(りょう)。私の所属する外科病棟で一緒に働く唯一の男性看護師だ。

 実は遼くんとは同郷の仲で、二歳年上の先輩。

 遼くんは高校卒業と共に東京に上京し、看護学生をしてストレートで看護師になった。

 同じように看護師になりたいという夢を持っていた私に、遼くんはいつも『早くこっちに出てこい』と言っていた。

 上京することを話したときも、『うちで看護助手募集してる』と教えてくれたのがこの病院に就職するきっかけになったのだ。

 遼くんは気さくで話しやすく、そのコミュニケーション能力の高さは患者さんからも人気を得ている。

 この病棟唯一の男性看護師ということもあって、先輩後輩業種問わず仲間たちからも頼られることも多い。

 学生時代はひたすらバスケットバールをしてきたスポーツマンで、全国にも行ったことがある。社交的で周囲を引っ張っていくところは、きっと学生時代に培われたのだろう。

 私がこの病院に就職したのも、同郷の先輩である遼くんが働いているからというのが大きかった。

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