身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
『はい、佐田豆腐です』
久しぶりなのにそう聞こえないおばあちゃんの声。
無条件にホッとしてしまうのは、おばあちゃんが持つ不思議な力なのだろう。
「おばあちゃん? 私、菜々恵」
『菜々恵か。どうしたの』
「うん……あのね、私……」
何度も頭の中で伝える言葉を繰り返し練習した。
それでもやっぱり、いざとなると躊躇してしまう。
もし、おばあちゃんに引かれたら。勘当だと言われてしまったら……。
良からぬ展開が頭をよぎり、言葉に詰まる。
『菜々恵……?』
でも、ちゃんと話すって決めたから──。
「お腹に……赤ちゃんがいるの」
電話だから、おばあちゃんがどんな顔をしてこの話を聞いているのかはわからない。
この話をする前に本来なら結婚を考えている相手がいるとか、そういう報告があるのが普通の順序だと思う。
それなのに、それを飛び越えて妊娠したと言われているのだ。
驚いて固まってしまってないだろうか。声が聞こえてこないことに、そんな心配でいっぱいになる。