身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「それでね……ひとりで、産もうと思ってる。もう決めたことなの」
微かに声が震える。
それでも伝えるべきことがすべて言えて、肩の力がふっと抜けていくのを感じた。
しかし同時に、看護師を目指すために東京に送り出してくれたおばあちゃんの気持ちを思うと胸が締め付けられる。
どんな思いでこの話を聞いているのかと思うと、喉の奥に固いものを飲み込んだように苦しくなった。
「おばあちゃん。ごめんね、急にこんな電話して……看護師になるために、東京に送り出してもらったのに、それなのに──」
『菜々恵』
電話の向こうから、おばあちゃんの声が私を呼ぶ。
『帰っておいで』
おばあちゃんはいつもと変わらない声で、ただそれだけを言った。
私が今、どんな状況なのかも、何があったかも聞かず、ただ黙って帰っておいでと言ってくれる。
その無条件の愛と優しさに、我慢していた涙が溢れ出していた。