身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
4、さようならの嘘



『村役場に問い合わせてみたんだけど、結構子育て支援充実してるみたいだよ。出産お祝い金が出たりとか』

「え、そうなの? そんなのがあるんだ。助かるな」


 お昼休み。ちょうどお昼を食べ終わったところできょんちゃんからの着信があり、休憩室を出て人けのの少ない病院の裏手に出てきている。

 九月に入ったばかりの空は、まだ猛暑の名残か強い太陽が地上を照らしている。

 おばあちゃんに帰っておいでと言ってもらえた後日、師長に退職の意向を申し出た。


 あの電話の最後、おばあちゃんは何かを察しているように『祖母が倒れたと言いなさい』と言った。

 おばあちゃんの言葉通りの理由を伝え、私は早期退職の手続きを踏んでもらえることになった。


『でも、良かったね。梅ばあちゃんが帰ってきなって言ってくれて』

「うん、そうだね」

『そうすれば私もそばにいるわけだし、マタニティーライフも出産もきっと大丈夫だよ』


 きょんちゃんは私が田舎に帰ってきたら、隣町までいかないとない産婦人科に毎度付き添ってくれると言っている。

 おばあちゃんもきょんちゃんも、今の私にとっては心強い存在だ。

< 102 / 246 >

この作品をシェア

pagetop