身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
『帰ってくる日、ちょうど私オフの日だったから迎えにいくからね』
「ありがとう。また連絡する」
きょんちゃんは「仕事、無理しないようにね」と言って通話を終わらせた。
「菜々恵」
スマホを耳から下ろしたところで背後から声をかけられ、驚いて振り返る。
そこには、さっき私が使った通用口から水瀬先生が出てきたところだった。
下の名前で呼びかけられ、思わず周囲を確認してしまう。
今のきょんちゃんとの通話は聞かれてない、よね……?
「こんなところにいたのか。捜していた」
「え……」
「退職の申し出があったと知った。どういうことなんだ?」
どうして捜されていたのかと疑問に思ったとき、退職の件を出されてどきりとする。
まさか、もう耳に入ってるなんて……。