身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「何かあったなら話してほしい。その決断をする前にどうして連絡をくれなかったんだ?」


 久しぶりに面と向かって話す水瀬先生は、真剣な目をして私の顔を見つめている。

 奥二重のはっきりとした目にじっと見られるとすべてを見透かされるている気になって、私の視線は堪らずふたりの間を泳ぎ出す。


「ごめんなさい。田舎の祖母が、倒れまして。それで、帰ることに決めたんです」

「お祖母様が? どこか悪かったのか」

「ちょっと、心臓が弱くて」

「それなら、うちの病院で俺が診る」

 適当に心臓なんて言ってみて、まずいと思ったときには時すでに遅し。

 咄嗟に答えたせいで、水瀬先生が心臓外科のドクターだというのをうっかり忘れていた。

 嘘をつくと焦ったときにボロが出る。


「どうしてもっと早く相談してくれなかったんだ。お祖母様に心疾患があるなんて早く知っていれば、俺がいくらだって動けたんだ」

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