身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 墓穴を掘ってしまった私は、黙ったまま視線を彷徨わせる。

 返す言葉に詰まりながら、水瀬先生がどうしてこんな風に私に構うのか全くわからず困惑する。

 婚約者がいるのに、ここまで私に構うのは何故?

 おばあちゃんのことまで気にかけてくれるなんて、変な期待をしそうになる。

 でも駄目だ。

 水瀬先生は私なんかと関わる身分の人じゃない。

 この病院を継承する先生には、相応しい相手がいて、縁談の話だって着々と進んでいる。


「水瀬先生に、そこまでしていただく理由はありません」

「何を言ってるんだ。理由も何も、君の大切な人は俺にとっても同じなんだ」


 なんでそんなこと言うの?


 真っすぐ目の奥を見つめられると、胸がきつく締め付けられる。

 逃げるように逸らした視線の向こうで、外からコンビニのビニール袋を手に提げて病院の敷地内に入ってきた遼くんの姿が目に入った。

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