身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 話し合って未来が変わることなんて何もない。

 水瀬先生はこの先婚約者と結婚することが決まっているのだ。


「そうかもしれないけど、その、お腹の子どものことも一切教えないで田舎帰る気なんだろ? いいのかよ、それで。本気でひとりで育てる気なのか?」

「本気だよ。一切知らせないで、田舎でひとりで産み育てる」


 私の迷いない返事に、遼くんは言葉を止める。

 グラスに入るメロンソーダに口をつけた。


「話は一旦戻すけどさ、その、先生の婚約者のこと……」


 婚約者。このフレーズと共に、必ずあの可愛らしい女性がはっきりと頭の中で蘇る。


「本当に話は進んでるのか? 先生には確かめたのか?」

「え……? そんなこと、確かめられるわけないじゃん」

「いや、だってよ、もし破棄とかしてたらって思わない?」


 破棄? そんなことあるはずない。


「ないよ。前に一度、ばったり会ったことがあるの、その女性に。にこにこしてて、そんな婚約破棄になっているような雰囲気じゃなかった」

「雰囲気って、それだけで決めつけてるのか」

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