身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む

──Side Ren




「お疲れ様でした」


 助手や看護師たちからかけられた声で、意識が戻ったような感覚だった。

 皮肉なもので、オペには普段以上に集中していた。

 オペ室を出て、外したグローブとディスポーザブルガウンをダストボックスに入れる。

 手を洗おうとフットペダルで水を出したタイミングで「水瀬先生!」と後方から声を掛けられた。


「先生、先ほどはすみませんでした。私のせいでオペが滞り」


 神妙な面持ちで謝りにきたのは、オペ看になりたての看護師だった。

 緊張していたのか、器具を渡す際に上手く渡せず床に落としたのだ。


「うちの科のオペには、先端が繊細な造りの器具も多い。慎重に扱うように」

「はい! 以後気をつけます」


 普段だったら、もう少しきつく注意した上に、今後のためにアドバイスもする。

 しかし今日はその気力がない。

 仕事とはいえ、今日は人と話せる心理状態ではない。

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