身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
体は日増しに重くなっているけれど、できるだけおばあちゃんを手伝いたい。
何も聞かず帰っておいでと言ってくれたおばあちゃん。
いざ帰って来ても、おばあちゃんは何も聞いてこようとしなかった。
ただ、私の体調を心配し、いつも通りに温かく迎え入れてくれた。
帰ってきた日の晩、布団を並べて暗くした部屋で「何も訊かないの?」と訊いた。
するとおばあちゃんは暗闇の中で「菜々恵が話したくなったら聞くよ」と言った。
だから私は、おばあちゃんに帰ってきた訳を話した。
初めて好きな人ができたこと。
でも、身分の大きな違いから、その人とは結ばれない運命にあったこと。
それがわかった後、彼の子を身ごもっていたとわかったこと。
彼のことを、今も想っていること──。
ぽつりぽつりと紡いでいく私の話を、おばあちゃんは黙って聞いてくれた。
そして話をすべて聞いてくれた最後、「ごめんね」と謝った私に、「ばあちゃんは、何があっても菜々恵の味方だよ」と言ってくれた。
本当ならこんな形ではなく、いつか幸せな結婚をして子どもができたと報告したかった。そんな思いに押し潰されそうになって、切なくて情けなくて涙がこぼれた。
枕を濡らし、静かに鼻をすする私の手を、おばあちゃんは布団から手を伸ばし握ってくれた。
少し冷たいおばあちゃんの手に涙を流しながら、その晩はいつの間にか眠りについていた。
もしかしたらおばあちゃんは、私から話を聞かなくても全部わかっていたのかもしれないと、ふとそんなことを思った。
年の功、というやつだろう。