身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
もう、婚約の話は進んだのかな。あれから三か月も経っているから、もしかしたらそろそろ結婚の運びになっているかもしれない。
私も、いつまでもこんな画像を眺めて想いを馳せている場合ではない。
忘れないと。水瀬先生のことはもう……。
スマートフォンを置き天井に体を向けて寝転がったとき、外から車のドアを閉める音が聞こえた。
山と畑に囲まれ、隣の家とは百メートル近く間隔も広く空いているうちのお店。
こんな田舎の村だから、車はそうそう走ってこない。
きょんちゃんは仕事の日だし、どこの車がうちの前に停車したのだろうと窓から顔を覗かせて、見えた光景に驚いて体を引っ込めた。
えっ……?
ドッドッと心臓が跳ね上がる。
嘘……嘘だ。そんな思いで再び窓からそっと外を覗く。
見間違いではなく、そこにあったのは見覚えのあるシルバーの高級車。
品川ナンバーのその車には、過去に二度乗せてもらったことがある。
そしてその近くに立ちうちの店を見ているのは、三か月ぶりに顔を見る水瀬先生だった。
黒いスーツの凛とした姿は、この田舎の背景にミスマッチで浮いている。