身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 なんで、こんなところに水瀬先生が? どうして、うちの田舎にいるの……?

 目にした光景に頭の中は急に真っ白になって、慌てて窓から身を引く。

 一体、これはどういうことなんだろう。いや、見間違い?

 パニックになりかけているうち、お店のほうから「ごめんください」と低くて落ち着いた声が聞こえてくる。

 その声を聞いた瞬間、また大きく鼓動が高鳴った。

 すっと立ち上がり、足音を立てず部屋の戸口に近づく。


「はい。どちらの……?」


 おばあちゃんが応対する声が店先から聞こえ、耳を澄ます。


「突然伺いまして申し訳ありません。私、東京の水瀬総合病院に勤務しております、水瀬漣と申します」


 丁寧な挨拶の言葉に、私の心音がドッドッと重なる。


「菜々恵さんは、ご在宅でしょうか」


 名前を口にされ、思わず口を手で押さえた。

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