身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「お体のほうは、落ち着かれたのですか」
居間のほうに通されたらしい水瀬先生は、おばあちゃんの体を気にかけた言葉をかける。
私が退職して帰郷する際、おばあちゃんの体を理由に挙げたからだろう。
「ええ、おかげさまで」
「そうですか。それは良かった」
話すようになってから知った、水瀬先生の穏やかな低い声。好きだなって思っていた。
オペ室には入ったことないけど、きっと指示を出す声もこんな風に落ち着いているんだろうなと想像したりもした。
いつか看護師になって、身近で働きたいと密かに思う気持ちと目標もあった。
もう、叶うことはないけれど……。
「本当は、菜々恵さんに直接お会いして話したかったのですが、おばあさまにもお願いに上がりましたので」
本題に入ってきた話に、戸口にぴったりと貼り付く。
久しぶりに高鳴る鼓動は、体に悪いのではないかと思うほど激しく音を立てている。
しんと静まる家の中で、水瀬先生から告げられる次の言葉に思わず息まで止めていた。
「菜々恵さんとの交際を、認めていただけないでしょうか」