身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「さぁ、そろそろお家に帰ってお昼ご飯にしよう」


 気づけば十二時を過ぎていて、ふたりに声をかける。

 仲良く揃って「はーい!」と駆けてきて、私の左右の手をそれぞれ取った。

 決まって右手に月、左手に詩。決めたわけではないのに、自然と自分の所定の位置になっているのが面白い。

 ふたりの小さな手を握るたび、愛しくて幸せな気分になる。

 同時に、私がふたりを守っていかなくてはというパワーももらえるから不思議だ。


「ママー、おなかすいたね」

「おなかすいたー!」


 ふたりから見上げられ、手をしっかり握り直して微笑む。


「よし、じゃあお手々繋いでよーいどん!して帰ろう」


 三人で手を繋いだまま、桜の舞う春の田舎道を家まで駆けていった。

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