身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 十七時を迎えるころ、「こんばんはー!」と店先に明るい声が聞こえる。

 それがきょんちゃんだと声でわかった子どもたちは、「きょんちゃんだー!」と居間を飛び出していく。

 あとを追って店に出ていくと、閉店の片付けの手を休めておばあちゃんがきょんちゃんに豆腐を入れたビニール袋を渡していた。


「梅ばーちゃん、こんな悪いよ。お金!」

「いらないよ。持って帰ってみんなで食べな」


 もうすっかり見慣れたいつもの光景。

 きょんちゃんがうちの店に買い物に来てくれて、おばあちゃんが買い物以上に色々持ち帰らせるのだ。


「きょんちゃん、あそぼう!」

「おー、月と詩。こんばんは」


 ふたりは「こんばんはー」と声をハモらせる。


「月、詩。きょんちゃんお買い物に来ただけだから、遊ぶのはまた今度だよ。今からお風呂入るでしょ?」


 私からでた〝お風呂〟のフレーズに、ふたりは「おふろー!」「はいるー!」と一気に切り替わる。

 最近、お風呂の湯船に浸かりながら遊べるおもちゃを入荷したからだ。

「きょんちゃん、またねー」と奥に引っ込んでいったふたりに小さく息をついた。

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