身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「でも、東京に出るのなんてしばらくぶりだな」

「そうだよね。菜々恵は帰って来てから出てないし、もう三年以上じゃない?」

「うん。そうなるよね」


 妊娠がわかり、仕事を退職して田舎に帰ってきてからもう三年以上の月日が流れる。

 子どもを産んで毎日目まぐるしく過ごしてきて、あっと言う間の年月だった。


 東京、か……。


 私にとっては、様々な濃い思い出が残っている場所。

 自然と思い出すのは、今も変わらず水瀬先生とのことだ。

 幸せだった記憶も切ない記憶も、今となっては心穏やかに思い返せる。

 元気にしているだろうか。

 結婚して、もしかしたらもう子どももいるかもしれない。

 幸せに過ごしていたらいいなと思うと、自然と笑みがこぼれていた。

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