身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
──Side Ren
自分でも驚くほど、その話し声に耳が傾いていた。
『笹原くん、籍入れたってね。奥さんも看護師だって』
看護師たちがしている雑談に気を取られることなんて普段はない。
しかし、彼が入籍したこと、相手が看護師だという内容は、聞き捨てならないものだった。
彼女は、菜々恵はどうした?
真っ先にそう思ったからだ。
あれからもう三年が経つ。
上手くいかず、別れたのかもしれない。
笹原は東京で仕事を続け、彼女は田舎に帰ったのだから遠距離恋愛だったはずだ。
引き留めることも叶わず彼女が退職をしていったあと、諦めきれない俺は彼女の田舎を訪問した。
あのときはとにかくもう一度話がしたくて、改めて交際を申し込みたくて、その思いだけで田舎を訪れた。
しかし、冷静になって考えてみるとストーカー行為に近いものがあったかもしれないと反省した。
彼氏がいると言われたにも拘らず、住まいにまで押しかけたのだから。
結局、会うことさえできずお祖母様に追い返されたわけだが、その後も彼女のことが忘れられなかった。