身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「この三年間、君のことをずっと忘れられなかった」
すぐそばで聞こえる声が信じられず、瞬きを忘れて聞き入る。
「迎えにくるのがこんなに遅くなって申し訳なかった」
え……?
そっと胸を押し、体を離す。顔は上げられず、彼のネクタイの結び目を見ていた。
「水瀬先生、婚約は……もう結婚されたんですよね?」
それなのに、迎えにくるのが遅くなったって、どういうことなのだろう。
「婚約も結婚もしていない」
「え……?」
「当時、勝手にそんな噂が流れたようだが、全部ただの噂だ」
「え、でも、昔食事に連れていってもらったとき、それらしき女性と会いましたよね?」
三年以上も前のことで顔などはもう思い出せないけれど、どんな雰囲気の女性だったかはちゃんと覚えている。
「あれは、どうしてもと両親に見合いをさせられた、そのときの相手だ。両親が縁談を進めてしまったがすぐに断った。あのとき、ばったり会って話しかけられたが、なんの関係もない」
嘘……。