身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「そう、だったんですね……。あの日、ちょうど水瀬先生に婚約者がいるって噂を聞かされて、それで、それらしき方にバッタリ会ったので、やっぱり本当の話だったんだって。あのとき、お手洗いであの女性に婚約したと言われたんです。だから、本当の話だと……」
「言われた? だとすれば、それは完全に嘘の話だ。だからあのあと、急に素っ気なくなったのか? 連絡しても反応が遅かったり、会う約束もさせてもらえなかった」
「だって、決められた相手の方がいるなら、離れなくてはいけないと思ったから……」
知らなかった当時の話が明かされていく。
あのときはただただ、水瀬先生と距離を置くことだけを考えていた。
だけど、それは全部確かめもしない私の早とちりだったということがわかり、脱力するような感覚に襲われる。
それは大粒の涙となって再び目からこぼれ落ちていく。
「断った縁談の話も、わざわざ言って心配させる必要ないと思っていたんだ。俺には君との未来しか考えられなかったから。でも、あのときもっと話せば良かったと、あとになって後悔した。言葉が足りていれば、こんなことにはならなかったんだ。俺が、ちゃんと君の誤解を解いてあげられていれば」