身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「やめろー!」


 そんな声と共に、私に回されている水瀬先生の腕が引き離される。


「ママをなかすな! ゆるさない!」

「あっ、ちょ、月!?」


 私が泣いているのを見て慌てている様子の月。

 必死に水瀬先生から私を引き離そうとしている様子から、先生が私を解放してくれる。

 詩は月の後ろで不安そうな顔をして固まっていた。

 水瀬先生との話に全神経を持っていかれて、ふたりが近くにいることまで気が回らなかった。

 私が泣いていたら、何も知らないふたりは水瀬先生に泣かされていると思ってしまうに決まっている。


「月、ごめんね。ママは大丈夫なの」

「だいじょうぶじゃない! ないてるもん!」


 キッと水瀬先生を睨んだ月は、私の首に両手を回して抱きしめる。

 詩も近づいてきて、私の背中に抱きついた。


「月、詩。ママが泣いてるのはね、嬉しいからなの。だから大丈夫なんだよ」


 人が泣くのは、痛いときや悲しいとき。

 まだ三歳のふたりには、嬉しくて泣くというのを理解するのは難しいと思う。

 でも、こんな感情があるということも知っていってもらいたい。

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