身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 子どもたちに警戒の目で見つめられる水瀬先生は、少し距離を取って腰を落とす。

 ふたりと視線を合わせる姿勢を取り、優しい笑みを浮かべた。


「月と、詩。初めまして」


 水瀬先生が初めて子どもたちにかける言葉。

 それだけでまた目に涙が浮かぶ。

 だってそれは、叶うはずなかった夢だから。


「ママを泣かせて悪かった。ごめん」


 謝られても、子どもたちは普段のように「いいよ!」とは言ってくれない。

 私が泣いたのを初めて見たからだ。子どもなりに衝撃的だったに違いない。


「ふたりと同じように、ママのことが好きなんだ。だから、これから仲良くしてほしい」


 子どもたちにわかりやすく話しているその言葉でも、〝好き〟だと言われるだけで鼓動が弾む。

 これは夢を見ているのではないか。水瀬先生と子どもたちを目にしながらそう思っていた。

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