身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
今もまだ、今日の出来事が信じられない。
水瀬先生が現れたことも、私のことを想ってくれていたということも、これからの未来を一緒に歩み出すということも。
なにもかも私の中で有り得ない未来だった。
【手が空いたら少し話をしよう】
メッセージを開いて確認し、水瀬先生に電話をかけてみる。
三度目のコールのあと『はい』と声が聞こえた。
「こんばんは。菜々恵です」
『電話ありがとう。子どもたちは、寝たのか?』
「はい。八時過ぎにふたりとも」
『そうか。結構早くに寝るんだな』
「そうですね。もっと早いときは七時台に寝ちゃうこともあります」
電話の向こうから微かに笑った気配を感じる。
「水瀬先生?」
『あ、いや、悪い。俺が、子どものこと何もわかってないんだなって思って』
「え、水瀬先生がですか?」
『ああ。実は今日も、どう接すればいいのか、話せばいいのか、ちょっと戸惑った」
「そうだったんですか? 全然そんな風には見えなかったです」