身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「はい。私も初めて産婦人科に行って調べてもらったとき、双子の赤ちゃんだと言われてものすごく驚いて」

『赤ちゃんの袋がふたつあるって?』

「はい。あんな早い時期にわかるもんなんですね」


 あのときお医者様に告げられたことは、とにかく驚きで今でもよく覚えている。

 嬉しい気持ちの反面、ひとりで同時に生まれるふたりの子を育てていけるのか、大きな不安も生まれた。


『でも、そのときはひとりで悩ませてしまっていたんだな』


 水瀬先生の声がどこか沈む。

 思わず反射的に「いえ!」と言っていた。

 彼は彼で、きっと私や子どもたちに対して申し訳ない気持ちや複雑な感情が渦巻いているに違いない。

 だけど、水瀬先生が申し訳ないなどと思わなくてはならない点は何ひとつない。


「そんな風に思わないでください。確かに、出産も育児も初めてで、不安はありましたけど、でも、それは誰だって同じです。初めてのことは不安がつきものですし!」


 若干論点がズレてしまっているような気がしないでもなかったけれど、わかってもらいたいのは水瀬先生は何も悪くないということ。

 電話口でフッと笑った気配を感じ取る。

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