身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
『もう、水瀬先生と呼ぶのはやめないか? 籍を入れれば、君も同じ苗字になる』
籍を入れる。水瀬先生は当たり前のことのように口にしたけれど、私にとってそれは平静ではいられないこと。
確かに、そうなるんだよね。やっぱりまだ信じられない気持ちが大きいけど……。
「そうですね。では、漣さんと呼ぶようにしないと。慣れるまで、つい水瀬先生と呼んでしまったらごめんなさい」
『じゃあ、次に会うまでに練習しておいて』
冗談ぽくそう言った漣さんにクスッと笑ってしまう。「わかりました」と約束をした。
『また連絡する。おやすみ』
「はい。おやすみなさい」
通話を終えると、胸がほっと温かい気持ちになっていた。
今日の昼間に突然の再会をして、ずっと夢なんじゃないかって疑っていたけれど、現実なんだなってやっと実感が湧いてきていた。
「あ、そうだ……」
話し終えたスマートフォンをタップし、トークアプリから漣さんとのメッセージを開く。
「……よし」
月と詩が並んで笑っている画像を選び、おやすみなさいのスタンプと共に送信した。
すぐに【可愛い。ありがとう】とメッセージが返ってきて、ひとり画面を見つめながら笑みが浮かんでいた。