身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「チャイルドシート、用意してくださったんですね」


 子どもたちを乗せる今日のために、購入して設置してくれたのだろう。

 連絡を取っている間はそんな話題全く出なかったのに、こうして考えて準備してもらっていたことに内心驚いていた。


「考えてみたらいるなってことに気づいて、結構慌てて用意した」


 車を出した漣さんは、横顔に微笑を浮かべてそう話す。


「そうだったんですね。私が早く気づいて伝えていれば慌てなくて済みましたよね。ごめんなさい」

「いや、子どもとの生活っていうのが初めてだから、俺のほうこそ不足が多いと思う。何かあればどんどん指摘してもらえればありがたい」


 そんな話をしていると、後部座席から「ママ?」と詩の声が聞こえてくる。


「詩、起きた?」


 助手席から振り返ると、目を覚ました詩がきょろきょろと周囲を見回していた。


「きょんちゃんは?」


 眠る前まできょんちゃんの車に乗っていたはずなのに、目が覚めたら見知らぬ車に乗っているのだ。訳がわからなくて驚いているに違いない。

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