身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「詩、きょんちゃんはお仕事でバイバイしたんだ。それでね、この間、会った……」


 そこまで言って、そういえば漣さんのことをなんと言って紹介すればいいのだろうと口ごもる。

 私が呼ぶように漣さんではなんか違うし、かといっていきなりパパじゃ混乱するだろうし……。


「この間会ったとき、名前を教えてなかったな。水瀬漣といいます」


 私が困っているところ、運転する漣さんが話に割って入ってくれる。


「うたとおなじ、ママがすきなひと……」

「覚えててくれたんだ」

「うん」

「良かった。詩は、魚好き?」


 突然漣さんに質問された詩は「さかな?」と訊き返す。私も首を傾げたい気持ちでとなりの漣さんに目を向ける。

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