身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「魚がいっぱいいるところに今から行こうと思うんだけど。あと、ペンギンとかアザラシとか」

「ペンギン!?」


 詩はペンギンに大きく反応する。その大きな声に、まだ寝ていた月が目を覚ました。


「詩はペンギンが好きなのか?」

「すきー!」


 声を弾ませる詩に、フロントガラスの先を見ている漣さんの表情が優しくなる。


「今から水族館に連れて行って、遅くならないうちにホテルにチェックインしようと思ってる」

「そうなんですね。水族館、今まで機会がなくて連れて行ったことないんです」

「そうなのか」

「はい。だから、ふたりともすごく喜ぶと思います」


 前でそんなことを話していると、後部座席でもふたりが話し始める。


「つき、ペンギンがみれるって!」

「ペンギン?」

「おさかなとかもみれるって!」


 月は寝起きすぐでまだぼやぼやしているようで、詩のテンションについていけてない。

 さっきの詩と同じように「きょんちゃんは?」と訊いてきて、同じ説明を月にも繰り返した。

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