身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
品川にある水族館の駐車場に入ったのは、十五時三十分を過ぎたところ。
後部座席のチャイルドシートからひとりずつを降ろし、水族館の入り口へと向かう。
子どもたちはいつも通り、月が私の右手、詩が左手と定位置にきて手を繋ぐ。その前を漣さんが先導する形で歩いていく。
今日で漣さんと子どもたちが会うのは二度目。
いきなり打ち解けることはやっぱり難しいなと、今の距離間を目にしながら思う。
そのうち、どちらかが漣さんと手を繋いでくれたら、四人家族ぽく見えるかな……。
気が早いかもしれないけれど、そんな妄想を頭の中で繰り広げる。
「ふたりは何が見たいかな?」
水族館に入場すると、漣さんが子どもたちに振り返り訊いてくれる。
詩は「ペンギン!」と即答したものの、月はちらりと漣さんを見上げ、すぐに俯いてしまう。
「月……?」
私が声をかけると、月は無言で私の腰に抱きついた。
まだ寝起きでぼんやりしているのもあるだろうけれど、それにしても普段とは様子が違う。
月は漣さんのことを〝ママを泣かせた人〟として今もまだ根に持っているのかもしれない。
あのとき誤解しないように説明したものの、やっぱり私が泣くという光景は衝撃が強かったのだろう。