身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「ママを泣かせた奴は、なかなか許してもらえそうにないな」

「ごめんなさい……。ケロッと忘れてくれてると思ってたんですけど、意外に根に持ってるみたいで」

「ケロッとは忘れないだろう。大事なママが泣かされたんだから」


 漣さんはそう言い、弱ったように苦笑する。


「いつ、漣さんのことを話そうかとさっきから考えていて……今回のこの機会に話せたらいいなって思ってるんですけど」

「そうだな。早くパパと呼ばれてみたいとも思うが、焦るのも良くない気がする。菜々恵のタイミングに任せるよ。この子たちのことを一番良くわかっているのは君だから」

 背中にそっと漣さんの手が触れる。

 それだけでドキッとしてしまったけれど、「わかりました。任せてください」と答えた。

 水槽を覗いていた詩が、ひとりこっちに戻ってくる。


「ねぇ、きてきて!」


 そう言って自然に手を取ったのは私ではなく漣さんのほうで、思わず目を見張る。

 お得意の来て来て攻撃で、漣さんを見ていた水槽まで連行していった。

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