身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
「月、それならサメより強いって言われてるのがこっちにいる」
「え! どれ?」
答えに困っていたところ、近くで話を聞いていた漣さんが助け舟を出してくれる。
漣さんが手に取ったのは、詩の持つペンギンと同じくらいの大きさのシャチのぬいぐるみだった。
「イルカ……?」
「これは、シャチだ」
「シャチ?」
漣さんは月の横に腰を落とし、目線を合わせてくれる。
後ろから見える月の横顔は、漣さんの顔をしっかり見つめていた。
「頭が良くて、泳ぐ速さは車と同じくらい速く泳げて、体は固くて強い。サメと戦ったら、シャチのほうが強いんだ」
月に説明してくれるのを聞いて、心の中で『へぇ……そうなんだ!』と私まで勉強になってしまう。
子どもにこうしてサラッと知識を与えられる漣さんが、改めて素敵だと思うし尊敬できる。
「すごい! シャチにする!」
シャチが強いことを教えてもらった月は、大事そうにシャチのぬいぐるみを抱えてお土産を決定した。