身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む



「わー! ひろーい!」

「つき、まってー!」


 漣さんが部屋のドアを開くと、月と詩は競うように中に入っていく。

 ワクワクした気分が全身から現れていて、ついクスッと笑ってしまう。

 漣さんも私と同じだったのか、部屋の奥に駆けていったふたりに微笑を浮かべていた。

 水族館から向かったのは、漣さんが予約してくれたホテル。

 都会のホテルに宿泊するなんて初めてのふたりは、移動中の車の中で私たちに質問攻め。

 ホテルに泊まるということ自体がわからないから、『お家じゃないところで今日は寝るんだよ』と話したら『どんなところ?』から質問は始まった。

 私も、東京でホテルに泊まるのはほとんど初めてのようなもの。

 過去に水瀬総合病院に就職面接で上京したときにビジネスホテルに宿泊したことはあるけれど、それはカウントできるようなものではない。

 だから、漣さんが用意してくれたこんなラグジュアリーホテルは初めてだ。


「月、詩、待って──」


 あとを追いかけようとしたとき、不意に後ろから漣さんに腕を掴まれた。

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