身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「でも、食べさせないといけない時期になったら、ひとりじゃ大変だっただろ?」


 ちょうど離乳食の時期のことを思い返していたとき、漣さんがタイミングよくそんなことを訊く。

 思わずふふっと笑ってしまった。


「そうですね。今思い返せば自分の慌ててる姿が笑えますけど、そのときは必死だったかもしれません。離乳食あげ始めたころ、好きなものがふたりとも同じで、月にあげてたら詩が泣いて、詩にあげてると月がって。最終的にはふたりとも泣いちゃって、結局食べずに終了とか。ありましたね」


 食事を前にスプーンを手に取るふたりを目にしながら、大きくなったなと改めて成長に感謝する。

 思い出し笑いを噛み締めながら何気なく漣さんに目を向けて、どこか切なげな表情で子どもたちを見つめているのを目撃した。

 でもそれは、気のせいだったようにさっと消える。

 そんな話をしていると、「ママー、食べてもいい?」と声がかかった。

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