身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む
私を見ていたふたりの目が、漣さんへと向けられる。
「パパ……?」
静かな寝室に落ちた詩の声に、きゅっと胸が締め付けられた。
「うたたちの、パパなの?」
詩が確かめるように漣さんを見つめる。
漣さんは柔和な笑みを浮かべ、「ああ」と頷き答えてくれた。
「ずっと会えなくて、ごめん。でも、これからはずっと一緒にいる」
詩と月は、じっと真剣な眼差しで漣さんを見つめ続ける。
すると突然、詩がベッドを飛び降り、漣さんに向かって駆けていく。
詩が両手を広げて近づいてくるのを見た漣さんは、その場に腰を落とし飛び込んできた詩を両手で抱き留めた。
「パパ! パパー!」
全力で抱きついてきた詩を、漣さんは両手で抱きしめる。
「詩……」
噛みしめるように名前を呼び、詩の頭を優しく撫でた。
「パパ……」
しかし、月のほうはぽつりとそう呟いたあと、ベッドの上に座り込んだまま漣さんに飛びついていく様子は見せない。
突然の知らせに、どう受け止めたらいいのか、三歳児なりにわからないのかもしれない。
パパだと知ったら、きっと喜んで飛び込んでいく。その考えはどうやら安直な考えだったようだ。
そのうち、月はベッドの上にころんと寝転がる。眠そうにしていた目はあっという間に閉じてしまい、一足早く夢の世界に旅立ってしまった。